K. SHUN

2020年5月15日5 分

仮想環境へのシフトを考える(5)信頼の効果と醸成するためのコミュニケーション

最終更新: 2020年5月29日

本エントリーはVWL.のTwitterで記載したVirtual Workplaceに関する学術文献を簡易的にまとめたものです。その他の文献情報については、Twitterをフォローいただければと思います。

今回のテーマは「信頼の効果と醸成するためのコミュニケーション」です。仮想環境で仕事をすることは、どのようなメリットをもたらし、どのような課題やリスクを生み出すのかを考えるうえで有益な知見を紹介します。

信頼の重要性に関する一連のポストはこちら

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■信頼がもたらす効果


 
仮想環境におけるチームが、 信頼を醸成できると…
 
・創造性向上 Murthy et al. (2013)
 
・知識共有促進 Jimenez et al. (2017)
 
・パフォーマンス向上 Lukić & Vračar (2018)
 
などの効果が生まれると報告されている。
 

 

 
仮想環境におけるチームが、 信頼を醸成できると…
 
・幸福度向上(well-being)
 
・離職率低下 などの効果が生まれると報告されている。
 
DeRosa, Hantula, Kock, & D'Arcy (2004)
 

 

 
仮想環境におけるチームが、 信頼を醸成できると…
 
・認知資源の節約 (知覚・認識・解釈がしやすくなる)
 
・取引コストの低下
 
・意思決定の簡易化 →チームの効率性が高まると提示されている。
 
McEvily et al. (2003)
 


 
信頼レベルの低い組織の特徴…
 
・不必要な重複が多い
 
・官僚主義的なシステム
 
・離職率が高い
 
・不正行為の蔓延
 
・社内政治的の横行
 
Covey, Merrill (2008)
 


 
信頼レベルの高い組織の特徴…
 
・付加価値を高めやすい
 
・社員の成長が促進
 
・イノベーションが促進
 
・コラボレーションの向上
 
・強固なパートナーシッ プ
 
・高い実行力
 
・高いロイヤルティ
 
Covey, Merrill (2008)
 

 

 
<ここまでのまとめ>
 
信頼は、リモート環境におけるチームにおいて多くのメリットをもたらします。 主に…
 
①コストメリット
 
②メンバーへのポジティブな心理的効果
 
③創造性の向上
 
④パフォーマンスアップ
 
などの効果が報告されています。
 

 
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■リモート環境下での信頼醸成ハードル

リモート環境で信頼構築は困難なことも確か…

コミュニケーションの不全によって 効果的な関係性や信頼関係が構築しにくい。

・テンポが遅くなる

・継続性が保たれない

・(感情など)豊かさが低下する

・同時性が低下する

Vrasidas & Zembylas (2003)

リモート環境では、信頼構築の源泉と考えられてきたものが減少する。

・物理的に一緒になって経験を共有する機会

・相互理解

・相互開示の機会

Lewicki, Bunker (1996)

リモート環境では、コミュニケーション不全による対立が生まれやすい。

リモート環境では、リーダーがメンバー同士の対立に気づかないことが多い。

Zakaria et al. (2004)

信頼構築には意識的に取り組む必要がある。

リーダーは、自分とチームメンバーの間だけでなく、 チームメンバー間の信頼にも配慮する必要がある。

信頼の創造、強化、維持のために継続的に尽力する必要がある。

AlAni, Marczak, et al. (2013)

<ここまでのまとめ>

リモート環境では、不確実性が高まりやすいと言われています。 そのために、メンバーが不安を感じたり、メンバー間のコンフリクトが生まれたりします。意識的に信頼を構築するための「仕組み」が求められます。

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■信頼に影響を与えるもの

信頼に影響を与えるもの

・能力(Competent)レベル

・開放性と誠実さ(Open and honest)

・メンバーへの関心(Concern for Employees)

・信頼性(Reliability)のレベル:決まりを守る信念

・同一視(Identification):チームへの個人のコミット

Powell et al. (2004)

信頼に影響を与えるもの

・同期性、同時性の高い技術

(情報の共有がリアルタイムで行われるもの:オンライン会議>チャット>メール等)

Dorairaj et al. (2012)

信頼に影響を与えるもの

・(同時性の高い)コミュニケーションの相互作用

その意味で、一方向のコミュニケーションツール(メール、オンライン掲示板等)は信頼を醸成しにくい。

Duarte and Snyder (2001)

信頼に影響を与えるもの

・チームの目標に対する理解、認識の共有

Verburg et al. (2013)

信頼に影響を与えるもの

“acts of vulnerability”(脆弱な行為) :素直さ、オープンマインドの姿勢

Shepherd and Zacharakis (2001)

<まとめ>

信頼を醸成するためには、チーム内の不確実性を減らすことが重要です。そのための「決まり」をつくったり、それを維持できるような体制を構築していくこと大切でしょう。

・テクノロジーの側面

・チーム内の業務設計の側面

・コミュニケーションの側面

上記への取り組みが求められます。

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■信頼醸成のためのコミュニケーション

信頼に影響を与えるもの

リモート環境におけるチームにおいては、コミュニケーションが重要。

他愛ないコミュニケーション Chidambaram (1996)

熱(感情表現)のあるコミュニケーション 

Fulk (1993) メンバーの積極的な発言 Meyerson et al. (1996)

信頼に影響を与えるもの

コミュニケーションを促すことが重要。

特に、「聞き手の反応」が重要と指摘。

Jarvenpaa, Leidner (1999)

予めパターン化されたコミュニケーション機会が重要。

(不公平、不規則、予測不可能なコミュニケーションは信頼を妨げる)

Jarvenpaa, Leidner (1999)

迅速なフィードバックやレスが重要。

(特に、個人や組織の成果に関する情報は常に提供されるべきである)

Shockley-Zalabak et al. (2010)

<ここまでのまとめ>

特に、信頼醸成のためにはチーム内のコミュニケーションが重要になります。

①コミュニケーションの多様さ (雑談・ディスカッション・対話等)

②タイミング

③機会の設計

などを戦略的に設定する必要があります。

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<まとめ>

信頼は、時間の経過とともに自然発生的に生まれるものと思われがちですが、 先行研究が示しているのは、戦略的に構築していくことが可能だということです。

チームを率いるリーダーには信頼を戦略的・意図的に構築するための準備や振る舞いが求められます。

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