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仮想環境へのシフトを考える(7)リモート環境の情報共有とメディアリッチネス論

最終更新: 5月29日

本エントリーはVWL.のTwitterで記載したVirtual Workplaceに関する学術文献を簡易的にまとめたものです。その他の文献情報については、Twitterをフォローいただければと思います。

今回のテーマは「リモート環境の情報共有とメディアリッチネス論」です。仮想環境で仕事をすることは、どのようなメリットをもたらし、どのような課題やリスクを生み出すのかを考えるうえで有益な知見を紹介します。


リモートワークに関する研究では、対面型よりも情報共有の精度が落ちてしまうことが様々な研究で提示されています。 コミュニケーションに関する問題を捉えなおす際の参考として、メディアリッチネス論を取り上げます。


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■メディア選択の重要性

リモート環境で生じるコミュニケーション問題の要因

・メディアによって提供される情報量が少ないことに起因する問題

・コミュニケーションの能力的な問題

Distefano & Maznevski (2000)

コミュニケーションの問題要因

・伝えようとする情報の内容や量に対して、誤ったメディアを選択するとコミュニケーションに混乱が生まれ、誤解が生じる。

Jonsen, Maznewski, & Davison (2011)

<ここまでのまとめ>

情報の質・量の側面に配慮して、コミュニケーションメディアを選択しないと、共通の理解が得られにくいことが指摘されています。 ここからは、メディアリッチネス理論を参照しながら、コミュニケーションにおける問題を考えていきたいと思います。

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■メディアリッチネス理論の前提

組織が情報共有を進めて処理すべき問題を分類

①不確実性(uncertainty)

②多義性 (equivocality)

これらを削減するために組織は情報を処理していると提示。

Daft et al. (1987)

Galbraith(1973)

不確実性(uncertainty)とは… タスクを実行するために不足している度合い。

不確実性が高い状況とは… 実行するために情報が不足している状況。

Daft et al. (1987)

多義性 (equivocality)とは… 何が課題なのか不明瞭な状態。

多義性が高い状況とは… 何からやるべきかも定まっていない状況。

Daft et al. (1987)

<ここまでのまとめ>

メディアリッチネス理論は、組織が抱える情報不全の問題を、以下の2つに分類しています。

①実行するために情報が不足している状態 (不確実性が高い状態)

②何をすべきかを定義するための情報が不足している状態 (多義性が高い状態)

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■メディアリッチネス理論の主旨

メディアによって、能力に違いがあるため、フィットする状況が異なる。使い分けることが重要。

・不確実性を減らしたい場合

  →情報量が簡素(Lean)なメディア

・多義性を減らしたい場合

  →情報量が豊富(Rich)なメディア

Majchrzak et al. (2000)

メディアの例:メール

メールは下記の側面からLean(簡素)なメディアである。

・話者の物理的な存在感を示すことができない。

・コミュニケーション時の非言語的(表情・声のトーン等)なシグナルがない。

Daft, et al. (1987)

メディアの例:WEB会議

WEB会議は下記の側面からRichなメディアであると言える。

・言語的・非言語的な情報量が多い

  →話し手のメッセージに対する支持や不支持のサイン・シグナルを送れる。

  →言語・非言語的にこちらの反応をフィードバックすることができる。

Hayward (2002)

対面でのコミュニケーションが最も情報量がRichである。

Daft, et al. (1987)

<ここまでのまとめ>

メディアリッチネス理論は、コミュニケーションの目的(不確実性 or 多義性の削減)によって、メディアを使い分けることを提唱しています。

課題が決まっているならば、あとは情報共有(スケジュール調整、報告等)すればよいため、簡素なメディアの方が効率的です。 反対に、何をすべきか?から話し合う際は、対面もしくは同等にRichなメディアを使用する必要があります。

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■メディア選択時に踏まえるべき特性

対面が許されないリモート環境におけるチームでは、 メディアを適切に選び、利用する必要がある。

Maznevski & Chudoba (2000)

メディアを選択する際に考慮すべき4つのメディア特性

・即時フィードバックの能力 Immediacy of feedback

・個人的な焦点を持つ媒体の能力 personal focus

・複数の合図を伝達する能力 number of queues

・言語の多様性 language variety

Daft, Lengel, & Trevino (1987)

メディアの特性(1)

・即時フィードバックの能力 Immediacy of feedback

  →迅速な双方向コミュニケーションと迅速なレスポンスを可能にする能力。

Daft, Lengel, & Trevino (1987)

メディアの特性(2)

・個人的な焦点を持つ媒体の能力 personal focus

  →個人的な感情や心理が読み取れ(表現でき)、メッセージを受信者のニーズや状況に合わせて調整することを可能にする能力。

Daft, Lengel, & Trevino (1987)

メディアの特性(3)

・複数の合図を伝達する能力 number of queues

  →コミュニケーションの過程で、複数の情報(ビジュアル、テキスト、音声等)を発信する能力。

Daft, Lengel, & Trevino (1987)

メディアの特性(4)

・言語の多様性 language variety

  →幅広い意味や解釈を持つ情報を、詳細に言語で表現し、適切な意味理解を可能にする能力。

Daft, Lengel, & Trevino (1987)

<ここまでのまとめ>

リモート環境では、メディアの選択に意識的になる必要があります。メディアを選択する際は、そのメディアの特性を意識する必要があります。

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■RichメディアとLeanメディアの特性

Richなメディアの効能

コミュニケーションの満足度や質を高める。

Ogara et al. (2014)

Richなメディアの効能

教育の効果を引き上げる効果がある。

Hew and Kadir (2016)

Richなメディアの効能

学習環境において、 学習者のフロー経験(没入・集中)に効果がある。

Chang et al. (2017)

Richなメディアのネガティブな側面

チーム内のコミュニケーションを効果的にする。しかし、 チーム間コミュニケーションに否定的な影響を与えることが示されている。

Carte & Chidambaram (2004)

Leanメディアのポジティブな側面

下記の問題を緩和する効果が示唆されている。

・異文化間の対立の増加

・社会的分断

Stahl, et al. (2010)


<ここまでのまとめ>

Richなメディアを選択することは、コミュニケーションに心理的にも、効果的にもポジティブな影響を与えます。 一方で、組織全体を考えると必ずしも良い影響ばかりではありません。Leanなメディアも良い側面はあります。 それぞれの特性を踏まえて 使い分ける姿勢が重視されます。

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<まとめ>


メディアリッチネス理論が提示するメッセージは、 他者とコミュニケーションをとる際に 「どのような目的で行うのか?」 を意識すべきということです。 それは、不確実性を減らすためか?多義性を減らすためか?それぞれテーマを確認しながらメディアを選ぶ重要性を提示しています。


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